ちょっとお。
お庭であそぼうとしたら、なんだか頭がくらくらするのよ。なによこのひざしは。
あたしはおとめなんだから、ひやけしたくないの。
ひかげでおやすみするわ。
あたしのしゅみは、かじること。 ひまなときはベッドやテーブルやイスのあしをがじがじとかじるの。
パパとママは困った顔をして、きょうはこんなものを買ってきた。
「天然にがり成分で、かじり、あまがみ・いたずら防止」と書いてある。あたしには何のことだかさっぱりわからない。
さっそくママがあちこち、シュッシュッと吹きかけていた。あたしはきょうみしんしんで、さっそくなめてみた。ぺろぺろ。
うーん。ふしぎな味ね。ぺろぺろぺろぺろぺろ。
ぺろぺろぺろぺろぺろ。
ママがふしぎそうな顔をしている。パパは「失敗なんじゃね?これ」と言っている。
なにかあたし、まちがったことしたかしら。
ママはもう一度、手にたっぷりふきつけて、その手をあたしに差し出した。
くんくんくん。ぺろぺろぺろぺろぺろ。
これがどうかしたの?
パパは「もしかすると、苦くないんじゃない?」といって、自分でなめてみた。
どうしたのパパ?
このおいしさが分からないなんて、こどもね。
あたしには入っていけないおへやが2つあるの。
今日、パパの目をぬすんでひとつのおへやにしのびこんだ。あちこちにおいをかいだりがしがしかんでいたら、あたしのおもちゃにぴったりのものが落ちてきたわ。
さっそくくわえて、いきようようっていうのかしら?あたしのあそびへやにもどってきたわ。
パパはあたしをみて、ダメっていいながらも、しゃしんをとってママに送っていた。しゃしんをとったあと、すぐに「これはダメだよ」ってとりあげられちゃった。
つまんない。
あたしのくわえたものは「どーれくん」というらしい。ママは「はやくさっぽろ、しょうかくしてきてくれないかしら」といつも言っている。
なんのかんけいがあるのかは、あたしはわからない。
あたしのとなりのおうちには、あたしと同じくらいの大きさのわんこさんがいる。名前はももさん。
あたしはももさんとおともだちになりたくしてしかたない。お庭に出ているときとなりからももさんの声がすると、ひじょうとびらのすきまからすがたをさがしてしまう。
あたしはお友だちがたくさんほしいの。
あたしはあたしんちのチャイムがなるとうれしくてうれしくて、しっぽはブンブンするし、そわそわしてあちこち走り回って、げんかんに向かってとっしんしちゃう。でもパパとママはとびらを閉めてあたしをげんかんに行かしてくれない。ずるいわ。パパとママだけげんかんでしらないひととお話して。「あたしもなかまに入れて」って、まどからのぞいて戸をカリカリしてあたしのそんざいをアピールするの。
ほら、しらないひとは「おや、かわいい犬ですね」とあたしを見てわらっているじゃない。ほら、あたしとお友だちになりたがっているじゃない。なんで出してくれないのよ。
パパとママはあたしを見て 「ばんけんにならねぇ」とためいきをついている。
あたしはばんけんじゃないの。くるみさんなの。
さいきんのあたしはお外のさんぽも平気だわ。
今日もパパとママと、とやのがたこうえんにさんぽに行った。いぜんだったらぜったいにむりだったこんな場所も、ほら、平気でわたれるの。りょうがわが川だけどぜんぜん平気だわ。
でも、きょうは天気がよすぎて、暑くて、あたし、とちゅうでエネルギーが切れちゃった。
さいごはママにだっこしてもらって帰ったの。ママ、「重い〜」だって。おとめにたいてししつれいね。
そういえばパパも「エネルギーが切れた。補充しなきゃ」って言って、今、「ぷしゅ」て缶をあけて何か飲んでいる。
でも、どう見てもパパはエネルギーをほじゅうした後のほうが、つかいものにならないわ。
ふしぎね。
このあいだ、お店のおねーさんからあたしはつめをきってもらったの。
そしたらね、リボンをしてくれたわ。
シャンプーのあとやつめきりのあとに、いつもリボンをしてくれるんだけど、あたしはリボンが嫌い。
だからいつもはすぐに取るの。でも、今回はママが「く〜ちゃん、かわいい。ピンクのリボンが一番にあう」っていうから、しょうがないがまんしてあげてるわ。ま、しばらく親こうこうしてあげる。
パパは「わんこにリボンなんかいらん!」と、ちょっとすねている。こまったものね。
でも、あたしはちからかんけいの上のほうにしたがうしゅうせいをもっているので、そうね、
しばらくリボンつけることにするわ。
大きな地しんが起きた。そのときあたしはクルマの中にいて良く分からなかったけれど、大きな地しんだったみたいだ。
パパはあたしを見て「くるみ。地震を予知できないか?」って言った。
ちょっとぉ。むちゃ言わないでよ。
テレビでは、かしわざきという場所であたしとおなじミニチュアダックスのおともだちが、さいがいきゅうじょけんというのでかつやくしているようすがうつったらしい。
それを見たパパとママは、「そうか、もともとアナグマ猟のために開発されたダックスフントは、ゴールデンレトリバーなんかの大型犬とちがって小さな隙間からでも中に入ることもできるから、ガレキの下に閉じこめられた人を探し出す災害救助犬にはぴったりだ」と、はしゃいでいる。
そしてあたしを見て、パパがとんでもないことを言う。「くるみ、おまえ災害救助犬の訓練受けるか?」って。
ちょっとぉ。むちゃ言わないでよ。
でも、パパとママはその気になっちゃったみたいで、パソコンでくんれんじょのばしょをかくにんし始めた。
ちょっとぉ。むちゃ言わないでよ。
夜。パパといつものように、なわの投げっこをして遊んだ。この前あたしの家に遊びに来たおともだちは、1時間でも投げっこで遊ぶらしいけど、あたしは3分もするとあきてしまう。
そんなあたしをみてパパは、「集中力の続かないヤツだなぁ。災害救助犬は、無理かなぁ」と、タメイキをついている。
だから、むちゃ言わないでよったら。