9月になった。ようやくあたしのにがてな暑いきせつが終わったわっ! って思ったら、なによ今日のにいがた市のこの暑さは。
パパは 「怪談話で、最後の夜が明けたとおもったらまだ終わっていなくて、幽霊に取り殺された話を思い出したぞ」ってぶつぶつ言っている。
あたしは毛がわのために、パパはしぼうのために、暑さにはてんで弱いのよね。
9月になった。ようやくあたしのにがてな暑いきせつが終わったわっ! って思ったら、なによ今日のにいがた市のこの暑さは。
パパは 「怪談話で、最後の夜が明けたとおもったらまだ終わっていなくて、幽霊に取り殺された話を思い出したぞ」ってぶつぶつ言っている。
あたしは毛がわのために、パパはしぼうのために、暑さにはてんで弱いのよね。
あたしはミルクガムが好き。さいしょはかたいのだけれど、かんでいるとやがてやわらかくなってきて、ミルクの味がしておいしいの。
ガジガジとかじって少しずつ食べて、でもね、あとひとくちで終わっちゃうところまでくると、なんだか全部を食べてしまうのがもったいなく思う。 だからね、ひとくちだけ残ったミルクガムを、あたしはたべないで残しておくの。
これはあたしのたいせつなたからものだから、カーテンのうしろや、テレビのうしろや、パパのおへやにかくすの。 そして一日になんども、『たしかこのあたりにかくしたはずだわね』ってかくにんする。これはパパやママにもゆずることのできない、あたしのたいせつなたからものだもの。
ときどきすきまに落ちてしまって、あたしがとれないことがある。なんとかほじくり出そうと足でカリカリしていると、「床が傷つくからだめ!」ってとんできたパパやママにひろってもらえるのだけれど、あたしはすぐにうばいかえして、また別な場所にかくすの。
そうやって一日に何回も何回もかくし場所をかくにんして、ひっぱり出したたからものをくちに入れたまま、『そろそろ食べようかな、でもこれしか残っていないから、まだがまんしようかな』って、おうちの中をあちこちうろうろしながらなやむの。
さいきんママが何かにむちゅうになっている。おりょうりをする前にウンウンといっしょうけんめい考えていて、おりょうりした後はメモをみながらパソコンの前でなにかをしている。
「なにをしているの?」 って聞いたら、ママは
「おりょうりレシピのサイトで人気者になるのよっ!」と、いきまいていたわ。 「いい? くぅちゃんはかわいさで人気者になるようにがんばるのよ。ママは簡単レシピでがんばるからね!」だって。
あたしはなんだかよくわからないわっていう顔をしたら、「これよ。ママはこれをがんばっているのよ」って、パソコンをひらいて見せてくれたわ。
むちゅうになるのはいいことなのだけれど、実はあたしはちょっとめいわくをこうむっているの。だってね、ふだんはパパとママのごはんができれば、すぐにあたしもいっしょになって「いただきます」をするのだけれど、さいきんはちがうのよ。
ママはきれいにもりつけることに時間がかかるし、パパはそのおりょうりのしゃしんをとることに時間がかかる。だからあたしはしばらくの間、ごはんがおあずけじょうたいなの。まったくもってめいわくな話だわ。
あたしはママに「わんこさんのごはんのレシピをいろいろ考えてみたら人気が出るんじゃないかしら。だいじょうぶ、あたしがじっけん台になってあげるから」と、ていあんした。 そしたら、「わんこのごはんはだめなのよ」だって。 ちぇっ、ざんねんね。
パパがあたしにそっと耳打ちしたわ。
「いつまで続くか、賭けないか?」 だって。
あたしはけさになってもだるいのよ。パパのイスにもたれてねむねむなのよ。
だってきのう、ジジとババのおうちにあそびに行ったらね、あたしの強てきの、もえちゃんがいたのよ。
あたしはむぎゅっとされて、「どうぶつのおいしゃさんごっこ」とか、「ひこうきごっこ」とか、「にかいでさんぽ」とか、いろいろつきあわされて、さんざんだったのよ。
あたしはもうぐったりとつかれてつかれて、きょうになってもだつりょくなのだわ。
たまには運動しなければねということで、パパとママといっしょに、ごまどう山というところに登ってきたわ。
ひょうこう268.3メートルの小さなお山で、パパが小学校の1年生だか2年生だか3年生の時にえんそくでのぼったんだって。ずいぶんはっきりしないきおくだけれど、ようするにあたしが生まれるはるか昔ということだけはたしかね。
小さなお山らしいのだけれど、短足のあたしにはちょっとてごわかったわ。とくにさいごのかいだんが強敵だったわね。ちょうじょうについた時、あたしははあはあぜいぜいとへばったわ。でも、どちらかというとママのほうがへばっていたと思うの。
ちょうじょうからは、まっ白くて円形の大きななたてものがひとつ、とくに目立って見えたわ。ビッグスワンというのだって。
あたし知っている、パパはあそこに月に2回くらい行くのよ。 でもね、あそこから帰ってきた後のパパは、やたらとじょうきげんか、そうでなければ、生けるしかばねのようになっているかのどちらかなの。きっとへんなばしょなのだわ。あたしはあんまり近寄らないようにしたいわね。
この前も書いたのだけれど、ママは今、おりょうりに燃えているわ。もっともあたしはそのおんけいにあずかれないので、正直どうでもいいわねって感じではあるのだけれど。
ママは今、「きょうどりょうり」というのを作ろうと燃えている。パパがおしごとでちょっとかかわったという、「にいがたのおかず」という本を見て、どれにしようかうんうんと考えているの。
おっと。
今、パパがね、本のせんでんをしなさいっていうので、「にいがたのおかず」をしょうかいするわね。あたしは自分のごはんのためにがんばるわ。
開港舎というところから出ています。1600円です。よろしくね。
以上せんでん終わり。
ママはおうちの前のやおやさんで「ずいき」というものを見つけて買ってきた。パパは「実物を知らない人もいるだろうから、まずは写真を撮ろう」といって、白い板の上でしゃしんをとっていたわ。
あたしはさっそくきょうみしんしんで、くんくんしてみた。
うーん。よくわからないわ。あんまり食欲をかきたてられるにおいではないわね。
ママのおりょうりでおいしくなるかしら? あたしも食べられるかしら?
ママが手作りのパンを焼いたわ。いいにおいがして、あたしはうれしくてうれしくてぴょんぴょんなの。
いつもはひときれふたきれもらえればまんぞくなのだけれど、今日はみっつもらっても、「もっとちょうだい。ママの手作りパン、もっとちょうだい」って、おねだりしたわ。
さっき、ババがあたしんちに来たわ。えだまめとか、いなりずしとか、山梨のぶどうとか、いろいろ持ってきてくれたの。パパはたぶん「えだまめで黄色いしゅわしゅわがたまんない」ってよろこぶだろうし、ママは「今日のおかず、助かっちゃった」ってよろこぶと思うの。
で、あたしには何かないの?
あたしは佐渡というところに行ったことがあるのよ。 トキのほごセンターにもちょっとだけ寄ったわ。ざんねんながらわんこはしいくしせつの中に入ってはいけないので、あたしはトキさんとは会えなかったのだけれど。
今日、トキがしいくしせつから自然の中に放されたと、テレビのニュースでやっていた。 次に佐渡に行けば、あたしはトキさんと会えるかしら。
「くるみ。おまえも自然の中に放されてみるか?」ってパパは言うのだけれど、あたしはごめんこうむりたいわね。
あたしは『しんそうのれいじょうのくるみさん』なので、野生の中では生きていけないのよ。
あたしは朝、本当はお庭に出ておしっこをしたい。でも、お庭でおしっこをすると芝生がかれるからダメだよって、パパとママが言うの。だからあたしは朝、まずはトイレでおしっこをしないとお庭に出してもらえないの。
今朝もお庭に出たくてまどべできゅんきゅんないていると、パパから「おしっこをしてからだよ」と言われた。
あたしはさいきんかしこくなってきて、トイレの上でおしっこをする「ふり」をして、パパやママをあざむこうとするのだけれど、今日はざんねんながら通用しなかったわ。 明日はもうちょっとうまくやろうと思うの。
ゴミばこの中からスポンジをひっぱりだしてあぐあぐとかみちぎってあそんでいたら、ママに見つかっておこられたわ。
「そんな悪いことをする子は返品です!」って言われて、ふくろの中に入れられたの。
あたしはがさごそ音がする買い物ふくろの中に頭をつっこむのが大好きなのだけれど、自分がちょくせつその中に入りたいとは思わないのよね。
あたしはパパとママ、それとママのジジ・ババといっしょに、くりえんという場所にくりひろいをしに行ったわ。 あたしはくりひろいというものが初めてだから、きょうみしんしんだったの。
山のとちゅうで丸いものがあちこち落ちていたわ。 あたしはわくわくしてにおいをクンクンしたかったのだけれど、ママに「あぶないからゆっくりだよ」ってひっぱられた。 ちょっとなによ、じゃましないでよママ。
丸い中に入っているものからなにやらおいしそうなにおいがするのだけれど、おハナを近づけようとするとちくちくしたものがささっていたいのよ。これはなかなか強敵ね。
パパとママがちくちくしたものを足でふんで、開いて、中のものをひろっていたわ。 それはもちろん食べられるものよね? わたしも食べられるわよね?