ママがいなくても大丈夫よ。
パパとはこんなに仲よし。

ママと会えないのはさみしいけど、ちゃんとおるすばんをしているわ。
パパはママがいないうちに、どくしんきぶんってのをあじわっているみたい。
あたしはママにほうこくしたいこともあるけど、わんこさんはびょういんには入れないから、ママのおみまいにはいけないんだって。
しつれいね。

ママがびょういんというところで長い間のおとまりして、帰ってきてから10日がすぎた。ママはようやくふつうに歩けるようになったのだわ。
きのうは、あたしとママとパパとで、しばたのいじみのこうえんというばしょに、あやめを見に行ったの。
たいようがギラギラしていて、たんそくのあたしは地面からのねつをもろに受けて、はあはあぜいぜいだったのよ。
あやめはまだ3ぶさき。まん開ではなかったのがざんねんね。
でも、あたしはそもそもたべられないものはあんまりどうでもいいのよね。
さいきんのあたしは、「よわむし・くぅ」なの。
お買い物に行ってもおさんぽに行っても、人やわんこさんがこわくてにげまわってばかりいる。パパもママも「もっと愛きょうをふりまかないと、おいしい思いができないぞ」と言うの。
やすらぎていをおさんぽしていても、わんこさんを見つけてはびくびく。カラスさんを見つけてはびくびく。あたしのとなりをじてんしゃが通ったときは、びっくりして飛びのいて、あやうく道路に飛び出すところだったわ。パパから「おまえ、クルマにひかれたらどうするんだ」ってしかられた。
そうよね。もうちょっと愛きょうをふりまかないと、アイドルになれないわよね。
あたしはセクシーなポーズというのを、ちょっと研究することにしたわ。
こんなのは、どうかしら?
パパがね、パパのおしごとした本のせんでんをしなさいって。
なんであたしがそんなことしなきゃいけないの?しゅつえんりょうはもらえるの? って聞いたら、「おまえの生活だってかかっているんだよ」って言われた。ふーん、そうなの。
あたしはあたしのごはんのために、がんばることにしたわ。
あたしは、「キャンペーン・くぅ」なのよ。
あたしの大好きなトマトが、だんだん赤くなってきたわ。くんくんくん。でもまだちょっとおいしそうなにおいじゃないわね。
ママは「くぅちゃんが勝手に食べてしまわないか、心配」と言うのだけれど、あたしはそんなおぎょうぎの悪いことはしないわよしつれいね。
ほんとうはね、この高さにあるともうあきらめちゃうのよねあたしは。 でもこれを言うとまたパパから、「この根性なしめ」ってばかにされるから、ないしょにしておくの。