ときどきママといっしょにお店に行くの。お店にはあたしのおともだちもいっぱいいるんだけど、お洋服を着ているコもいる。お店にも服がたくさんならべられているわ。
でもあたしは着ないの。というか、着せてもらえないの。
あたしのパパは、「わんこに服をきせるなんてアホくさい。それだけはぜったいにゆるさない」って言うのね。ママはちょっとだけ。ほんのちょっとだけ不満らしいけれど、パパのほうしんを支持しているらしい。
今日、お店でママのかいしゃの人とあった。そのひとのおうちにも、あたしとおなじおともだちがいる。毛の色は黒くて、しかも短い。でもあたしとおなじ種類のおともだちだ。ママとそのひとと、お店の中でながくお話をしていた。
「くるみちゃんは、服はきないのかしら?」そのひとが聞いた。
「だめ。うちのダンナは『犬畜生に服なんて、ぜったいに許さん』って断固反対している人だから」と、ママ。
服がならんでいるばしょでそんな話をしていたから、「どれがうちのコに似合うかしら?」って、いっしょうけんめいにえらんでいた女の人は、ママの話を聞いて苦笑していたわ。
あたし?
服は着たことがないからわからない。
そうね、お店でシャンプーしてもらうとお耳にリボンを付けてくれるのね。ママはリボンをつけているあたしをみて「かわいい」って言ってくれるの。
でもあたしは体になにかよけいなものがついていると、きもちわるくてきもちわるくて、もう、すぐにリボンをはたきおとしちゃうの。
そんなあたしを見て、ママはふまんそう。
でも、パパはまんぞくそう。
むずかしいわね。まったく。